審査講評
堤幸彦(演出家)・大根仁(演出家)・
平川雄一朗(演出家)・小原信治(作家)に加え、
最終審査員の方々からの総評をご紹介いたします。
グランプリ受信作品
制作費3,000万円(相当)で映画制作+賞金100万円
- 作品タイトル
- 高崎グラフィティ。
- 応募者/監督
川島 直人
- 受賞者コメント
泥水すすりながら必死にやってきて良かったです。学生の頃から一緒に走って来てくれたスタッフ、キャストと一丸となって作った予告編がグランプリを取れたことを誇りに思います!僕が映画に沢山の感情をもらったように「高崎グラフィティ。」も見てくださったみなさんの心に何か残る映画になるようにがんばります。最後に携わってくれた人すべてに感謝申し上げます。
- 受賞作品について
-
激論に次ぐ激論の末、第1回「未完成映画予告編大賞」グランプリは、川島直人監督の「高崎グラフィティ。」に決定いたしました。川島監督、おめでとうございます。
各審査員より高得点を獲得されたのはもちろんのこと、地域に光を当てるという、僕たちの呼びかけに対して、正に「直球勝負!」の企画であり、また各シーンで描かれた青春群像のみずみずしさは、大スクリーンで見たいという強烈な思いを抱かせてくれました。他の作品と比べ企画自体の衝撃度は決して高くはないと思いますが、誰もが通過する「高校3年生最後の1週間」を描き切るストーリーは、10代のみならず幅広い層に訴えかける力があると感じました。きっと、5人の登場人物の誰かに、感情移入してしまうのではないでしょうか。自分の未来を夢見て、また絶望しそうになり「空を見上げる」予告編のラストは、心に突き刺さります。
川島直人監督は、このコンテストのためだけに、スタッフとキャストを集め撮影されたと聞いております。随分とエネルギーを割かれたことでしょう。それを、今度は、僕たちオフィスクレッシェンドがお返しする番です。力を合わせて、傑作映画を作り上げましょう。
「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」事務局リーダー
株式会社オフィスクレッシェンド取締役副社長COO
神 康幸
審査員賞
堤 幸彦 賞
賞金10万円
- 作品タイトル
- 浅草スマイル
- 応募者/監督
-
林 隆行
- 受賞者コメント
この度は、栄誉ある堤幸彦賞を頂きまして誠にありがとうございます。っていう堅苦しいコメントは、やっぱり僕には出来ません(笑)。めちゃくちゃ悔しいです。グランプリ獲りたかったです。映画つくりたかったです。という心の声は置いときまして、大変素晴らしい賞を賜り、ありがとうございます。そして、「浅草スマイル」に携わってくださったみなさま、本当に本当にありがとうございました。
- 受賞作品について
-
力作が並ぶ中で「カヅノ」「浅草スマイル」「東京20K」で悩みました。何れも方向性は違えど“見たい!”作品達。
「浅草スマイル」はその中でもストーリーに浸ってみたいと思うと同時に、予告編で語られない部分=漫才の中身や二人のキャラクター、作品の帰結、に触れたくて決定しました。堤 幸彦(演出家)
大根 仁 賞
賞金10万円
- 作品タイトル
- 沈める渋谷
- 応募者/監督
-
松澤 伊知哉
- 受賞者コメント
この度は僕の大好きな監督から賞を頂くことを大変光栄に思います。日本の映画業界という産業がこのコンクールを筆頭に発展してくれることを切に願います。ありがとうございました。
- 受賞作品について
-
明確なストーリーや、具体的なテーマを伝えようとする応募作品が多い中で、「なんだかよくわからないけどカッコ良さそう」「なんだかよくわからないけど観てみたい」という、つまりは予告編らしいハッタリが効いていて好感が持てました。
たぶん大当たりか大外れかどっちかだと思うのですが、どっちにしても才能があることは間違いないし、全てのショットが持つ凄まじさには嫉妬すら感じます。どうか大当たりの方でありますように!!
大根 仁(演出家)
平川 雄一朗 賞
賞金10万円
- 作品タイトル
- こもろの星の淵
- 応募者/監督
-
白鳥 蓉子
大島 風穂
- 受賞者コメント
このたびはこのような賞をいただき、誠にありがとうございました。改めて「予告編を作る」と身構えてみると、正解が無限にあるように思え、編集に悩みました。素材を生かし、シンプルに、より作品への謎が深まるようなかたちにするよう心掛けました。
- 受賞作品について
-
圧倒的な情報量の少なさなんだけど、どんな作品になるのだろうと一番興味を持ちました。自然の美しさと生命が宇宙につながっていく何かが見れそうで、どんな物語を紡ぐのか?と。情報が溢れている世の中で、日々の生活に疲れている自分を癒してくれる作品でした。予告編の映像から作り手が持っている優しさを感じたことと、今回のコンテストの名前にある“未完”にぴったりだと選ばせていただきました。
平川 雄一朗(演出家)
小原 信治 賞
賞金10万円
- 作品タイトル
- 十条虚構捜査-代理脚本家-
- 応募者/監督
-
細井 尊人
- 受賞者コメント
4年前のある日、突然このアイディアが天から降ってきました。以来、ずっと企画の実現を目指してきたわけですが、いつもあと一歩止まり。しかし、今回はこうして賞をいただく事ができました。「これはそろそろ、実現するんじゃないか?」と妄想しつつ、次のチャンスを狙っていこうと思います。この度は大変ありがとうございました。
- 受賞作品について
-
二次審査こそ通過しなかったものの太田信吾監督の「大津city今恋心」も着眼点やテーマ性、映像の質感など、個人的には最後まで推したい作品だったのですが、最終的に個人賞は一作ということで、総合評価で僅かに上回った細井尊人監督の「十条虚構捜査-代理脚本家-」を選ばせて頂きました。「予告編大賞」という意味では良い意味でハッタリも効いており、まんまと「最終回が観てみたい」と思わされました。実はコメディなんじゃないかという期待とともに読ませて頂いたプロットには予想を裏切られましたが、決して期待を裏切られるものではなかったように思います。
小原 信治(作家)
審査員特別賞
賞金5万円
- 作品タイトル
- トットリノエイリアン
- 応募者/監督
-
古波津 陽
- 受賞者コメント
とても面白い試みのコンテストに参加させていただき、また審査員特別賞までいただいて感謝申し上げます。3年間温めてきたわりに、自分でもこの物語がちゃんとコメディになるのか自信がなかったのですが、予告編という形になってみて、形にできそうな気がしてきました。どうにか長編化したいと思います!
- 作品タイトル
- カヅノ
- 応募者/監督
-
三浦 祐太
池田 大輝
- 受賞者コメント
今回出演してくださった方々のほとんどは学生で、予告編制作にかけることのできる予算も限られていました。このような制約の中、光栄にも特別賞を受賞できたことをとても誇りに思います。制作に参加していただいた皆さんに心から感謝します。次こそは、さらに技術を磨き優勝を狙います。
- 作品タイトル
- 死体の人 in Tokyo.
- 応募者/監督
-
草苅 勲
- 受賞者コメント
自分は編集技術が未熟なので、予告編としてはまだまだだったのですが、作品そのものの可能性をくみとってもらえたのだと思い、うれしく感じています。選んでいただきありがとうございました。いつの日か劇場公開できるように頑張りたいと思います。
- 受賞作品について
-
あまりのレベルの高さに、「この作品にも賞をあげたい」という声が続出したため、予定にはありませんでしたが、「審査員特別賞」(賞金5万円)を新設することにいたしました。この「審査員特別賞」は、古波津陽監督の「トットリノエイリアン」と池田大輝監督の「カヅノ」と草刈勲監督の「死体の人 in Tokyo.」に授与させていただきます。おめでとうございます。第二回目も、ぜひ、さらにパワーアップした作品で、ご参加ください!
「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」事務局リーダー
株式会社オフィスクレッシェンド取締役副社長COO
神 康幸
最終審査員による総評

脚本家岡田 惠和
朝ドラとか書いてるような、商業作家なので、基本的には閉じた作品は好きではないです。脚本家としてこのカントクと組んでみたいと思える人、作品を選びました。
まず、総評として感じたこと、TOKYOの捉え方描き方はここ20年くらい変わってないなあということ。それからナゾめいた女の人が多いなあ。未来に法律が変わるのも多い。
斬新さという居心地の良さに逃げてない作品を選びました。
5点つけたのは、「トットリノエイリアン」。才能とかセンスとかが丸裸になってしまう危険のある作品の予感。つまんないと本気で観客に怒られる可能性大の取り組み。でもこれは面白そう。観たいです。観ます。
その他「カワサキよ、俺の声を聞いてくれ」「巣鴨救急2036」「高崎グラフィティ。」をちゃんと観てみたいと思いました。作っていける人たちの匂いがいたしました。

株式会社KADOKAWA
代表取締役専務井上 伸一郎
総じてレベルが高く、どの作品も面白かったです。数本は「本編が完成したらぜひ劇場で観たい」と思わせてくれました。
伊藤嘉紘さんの「置賜における哲学ゾンビに関する2、3の考察」はストーリーの着想が独特です。池田太輝さんの「カヅノ」はテーマが今日的。映像処理もユニーク。草刈勲さん「死体の人in Tokyo.」は文学的薫りがする。個人的に一番良かったのは、細井尊人さん「十条虚構捜査-代理脚本家-」。すごい着想。ミステリを代理脚本家を探偵仕立てにして解いてゆく手法が素晴らしい。本編をぜひ観てみたい。高島優毅さん「巣鴨救急2036」は、普段から音声ガイダンスに感じるイライラを上手くすくい上げている。コント的センスがいい。村上智さん「東京の蛇」、田中穂先さん「トーキョー インターチェンジ」は共に「今」をすくい上げているテーマ性の高い作品。古波津陽さん「トットリノエイリアン」はコメディセンス有。

株式会社TBSテレビ
ドラマ制作部プロデューサー植田 博樹
「うわ。すげえ!!!まいったな。こりゃ・・・・」
僕は今回、最終審査からの参加でしたが、本当に本当に、すべて素晴らしかった。
逆に振り返って、審査する僕自身の携わっている作品が、今回審査対象の作品たちのクオリティーに、果たして到達しているのだろうか。僕に審査員の資格があるのかと自問自答しながらの審査になりました。
僕の審査基準としては、この作品が60分なり、二時間なりの完尺になった時に観たい、と個人的に思ったもの、という視点で今回、評価させていただきました。苦肉の策です。
そういう意味で言うと、「予告編」だったり「パイロット版」だったり、果ては「この尺だからこその魅力」といえるものまでカバーできる「未完成映画予告編」という新しいジャンルは、ストーリーの提示もできるし、演出家やスタッフ、俳優のプレゼンの場ともいえるし、その他にもいろんな試みが可能な場だと感じました。
今回、最終選考に選ばれたものはお金も時間もかかっていますが、アイデア一発の企画も成立するはず。「未完成映画予告編」というジャンルはまだまだ、懐が深そうです。

東宝株式会社
映画プロデューサー川村 元気
どの予告編もとてもよくできていて、楽しく拝見しました。映像も編集も音の使い方もそれぞれ個性があって、なにより技術が高い。最近、単館系映画を観に行くと上映前に流れるインディペンデント映画の予告編のクオリティにいつも驚かされるのですが、今回も似たような感覚になりました。そうなってくると、やはりいよいよ求められるのは「物語」の力なのかなと思います。「脚本」の力ともいえるでしょう。今回の審査は、予告編の先に作り手の「物語」の力を感じられるかどうかを気を付けて観るようにしました。

映画パーソナリティー伊藤 さとり
テロップのインパクトや、あえて画の力だけで紡ぐ作品など、興味深いものが多くありました。そんな中で、やはり重要視したのが、その物語の行方を知りたいかどうか。予告編である程度の説明がなされても、その先を知りたいと思う作品こそ、脚本力があり、セリフ力があり、画にも感情が映っているのだと思います。
「死体の人in Tokyo.」のシュールさと男女の母性から「思いやる心」「誰かの為に生きる喜び」をかぎとり、「トットリノエイリアン」では、あれだけ説明がなされていても、「では友人を殺すことが出来るのか?」「友人の言葉を信じられるのか?」「何が友情なのか?」を問う作品なのでは?と想像してしまいました。完成品を見てみたいとそそられる予告編でした。

演出家堤 幸彦
いやはや「予告編を作る」という行為は映像表現の1つのジャンルたりえると感じました。いわゆる「予告編としての完成度」以外に作家の方々の“譲れない何か”をストレートに感じ、身が引き締まる思いで見続けました。また技術的映像手法の自由度も我々のかけだしの頃とは雲泥の差で、“21世紀”を感じました。アナーキーなまでに映像作品の裾野が広がっていくのは素晴らしいことだと実感しました。

演出家大根 仁
全体的に思ったよりクオリティが高くて、飽きずに観れました。あからさまにお金目当てやほとんどプロとかセミプロっぽい人は、ここで今さらチャンスをあげる必要はないのかと。おそらく、このイベントには“若い才能を発掘する”という意味もあると思うので、若い人にはやや甘めの採点をしました。
それはさておき、「予告編」というテーマであるなら“単純に本編を観たい”“予告編に不可欠なハッタリの効かせ方が上手い”を基準に選ぶと「カヅノ」(堂々と「君の名は。」感を打ち出しているのがむしろ清々しい)、「沈める渋谷」(ショットに全て力がある。若さと空虚が両立している)、「死体の人 in Tokyo.」(単純に面白そう。自主映画にありがちな「何かをやりたい」「でもできない」「それでも自分たちはピュアである」のその先に行ってる、行こうとしている気概を感じた)以上3本が印象に残りました。次点で「カワサキよ、俺の声を聞いてくれ」「十条虚構捜査-代理脚本家-」「三ツ沢物語」です。

演出家平川 雄一朗
とてもクオリティが高い作品ばかりで驚きました。皆さんの映像や映画に対する情熱が溢れていて、パワーをいただきました。ただ残念な事に、予告編では全体像が見えてきません。いかに人々の共感や興味を引くかで決まってしまう。作る人それぞれであれば見る人もそれぞれで、そんな中、“狛江のエマ子”や“三ツ沢物語”“太良から見える世界の向こう側から君の笑う声がする。”など、完成形を見てみたいと思える作品がいくつもあった事は、映像業界の未来への希望を感じました。

作家小原 信治
プロアマ問わず、ということもあり、誰もが動画作品を制作できる時代なのだということを改めて思い知らされました。と同時に、ならば既成のヒット作品や今の市場に縛られることのない、もっと多様性に富んだものが出てきてもいいのではないだろうかという思いも抱きつつ、一次審査を通過した50作を鑑賞させて頂きました。どれも映画を撮ったことのない僕のような人間が意見できるレベルではなく、とても恐縮したのですが、個人的には①ヒット作品の影が浮かばないもの、②かといって独りよがりになりすぎていないもの、③(条件のひとつでもある)その地域で撮る意味を感じられるもの、という基準で選考させて頂きました。
最後にたくさんのご応募本当にありがとうございました。色々な意味で良い勉強になりました。
「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」事務局リーダー
株式会社オフィスクレッシェンド取締役副社長COO神 康幸
「未完成映画予告編大賞MI-CAN」。 この未完成なコンテストを「完成」してくださったのは、285人のクリエーターの方たちだったと思います。よくぞ、応募してくださいました。心より、感謝申し上げます。
僕たちの会社オフィスクレッシェンドは、創立から24年が経ちました。当初は、正に徒手空拳。未来は何一つ約束されていませんでした。しかし、2017年に至るまで、数々の作品を作り続けてくることができたのは「出会い」のおかげだったと思います。
だとすれば、会社の規模こそ小さいものの、未来のエンタテインメント界の創造者たちが船出する港を、この時代に作るべきではないだろうか……と発想したのが、「未完成映画予告編大賞MI-CAN」でした。新しい出会いの場を作ってみようと決意したのです。
2016年9月1日に企画発表し応募を開始したものの、オフィスクレッシェンドは大手映画配給会社でも、地上波テレビ局でもありません。果たして、僕たちの呼びかけに応えてくれるクリエーターはいるのだろうか。もしかすると、2~3作品ぐらいしか集まらなかったりするかもしれない……と、その実、心細い思いもしていました。
〆切りを迎えた日、MI-CAN事務局のメンバーは歓声を上げました。応募は日本全国から、そして海外からも。10代の方から60代の方まで年齢層も幅広く、総数は285作品に達しました。そして「予告編」のクオリティが想像をはるかに超えたレベルの作品ばかり。ただし、レベルが高いからこそ、必然的に審査は難航を極めました。普段は、応募者の皆様と同じく企画プレゼンする立場です。審査をするというポジションに初めて立ち、その重みに今さらのごとく気づき悩みは深まりました。しかし、皆様にビジョンを語った以上は、責任感を持ってコンテストを完成させなければならないという原点に立ち返り、皆様の情熱と向き合いました。審査には、おおよそ4ヶ月を費やしました。事務局による一次審査、弊社所属クリエーターによる第二次審査、著名な映像関係者の方々に加わっていただいた最終審査を経て、いよいよ、グランプリを発表する日がやって来たのです。今、万感胸に迫っています。
最後に、「未完成映画予告編大賞」は、僕たちの予想を超えて確かな反応をいただくことになり、第二回の開催も決定しましたことを、皆様にご報告させていただきます。